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石の人
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Toumo
最終章|思い出その百四|
石拾いの旅|兵庫県の海岸2
2022年5月2日。
最終章、青森の石を超える石を探す旅。前回に引き続き、兵庫県で石拾い。これから本日泊まる宿に向かう。釣り人たちがよく利用する、民宿らしい。GoogleMAPを見ると、すぐそばに海岸がある。海の音が聞こえる宿。石はあるのか。どうなのか。アップされている写真を見る限り、石は見当たらない。電車に乗ろうと時刻表を調べると、一時間に一本か、二時間に一本しか走っていない。
宿の最寄駅に着いた。連休だが全く人がいない。石拾いに行くと、だいたいこうだ。
石拾いをする時、海に人が少ないことは、喜ばしいことだ。のどかなこのまちを楽しもう。
古ぼけた完全無人の駅。もちろん自動改札ではないし、そもそも改札口などない。
この寂れた感じ、嫌いじゃない。石の一人旅はこの感じがしっくりくるのだ。
これから本日泊まる宿に向かう。釣り人たちがよく利用する、民宿らしい。GoogleMAPを見ると、すぐそばに海岸がある。海の音が聞こえる宿。石はあるのか。どうなのか。アップされている写真を見る限り、石は見当たらない。
あ、海だ。海が見える。
海、、、。
まずは荷物を置きに、民宿へいくはずが、体が勝手に、、。海、、、。
海!!!そして砂浜。石ないやん。
ん?
ん?
石あるやないかい!
うれしい。石がある。それも、なんだか手頃なサイズ感。
美しき石の海。探し求めていた光景。
しかしこの海岸、民宿のすぐ目の前。もし女将さんに石拾いを目撃されてしまったら、、、。
女将「あら、、、何あの見知らぬ男性は、釣りでもないし、怪しいわね。確実にこの街の者ではないはね。まあ、ちょっと様子を見ましょうか。」
石の人「ころころころ、、、。」
女将「やだ、、、あの人石拾ってるわ、、。怪しすぎる、通報しないと!」
石の人「任務終了。民宿へ向かうか、、、。」
ザッザッザッ。
女将「えっ、ちょっと待って、こっちに向かってくるわ、、。通報しようとしたのがバレたのかしら、、。」ブルブルブル、、、ガタガタガタ、、、「お父さん!ちょっと!なんでこんなときにいないのよ、、。」
ザッザッザッ。
ザッ!
石の人「、、、。」
女将「な、、。ガタガタ、、なんのごようでしょうかかかか。」
石の人「、、、。予約した石の人です。泊めてください。」
女将「お引き取りください。」
となっては終わりだ。たしかこの宿以外は空いていなかったので、野宿になってしまう。この石の上で寝ることになる。
女将さんの視線を感じないうちに、どんどん拾ってしまおう。
ころころ!ころころころー!
この海岸の石、悪くない、悪くないぞ!!さっきの海岸よりも、いい気がする。多分。
さっきの海岸の石は、福井に似ていた。せっかく兵庫に来たので、自分を騙して、そこまで福井に似ていないと言い聞かせながら拾っていたが、やっぱり似ていた。ここのは似ていない。似ていないどころか、このような石は拾ったことがない。すごく変わっているわけではない、そこまで不思議な石でもない。色も激しいとかではない。でも、今まで見たことのない石を見つけると、結構嬉しい。もったいぶってないで、さっさとその石とやらをみせてみやがれと聞こえてきたが、残念ながらまだ寄りの写真がぜんぜんない。もうちょっと拾い進めてみよう。
ざざーん、ざざーーーん。
心地よい波の音と、石の転がる音。透き通った海に、青い空、心地よい風。全てがベストの状態だ。
女将さんの視線は、、よし、まだない。
ころころころ〜。
ざざざ〜〜〜〜ん。
駐車場でないことは、おわかりだろうか。
拾った拾った。
なんだか日が暮れそうなので、これくらいにしておいて、荷物を宿におき、風呂に入り飯を食わねば。
電車と歩きと石修行で疲れた。
石選抜。うん、見たことない石。黄土色や赤色や緑色の石には、きらきらと光る透明の結晶の粒が点々とある。なんだ。なんだこの石たちは。見たことがない。
とりあえず今は、初めての兵庫の石拾いによって気持ちが高揚しきっているので、冷静に石の良さを判断することができない。
では、無事女将さんにも見られることなく拾えたので、民宿へ行きますか。
ザッザッザッ。
ザッ!
石の人「、、、。」「予約した石の人です、、、。」
女将「はい。少々お待ちください。」
石の人「ほっ」
無事、チェックインを終えて、荷物も置けたので、これから風呂に入ろうと思う。女将さんに聞いてみると民宿の風呂は超ミニマムだそうで、おすすめできないそう。はい。そんなきはしていましたよ。てなわけで隣の駅の銭湯をすすめられた。一応温泉だそうな。そこへ行こう。
ところで、この民宿、私の部屋だけ鍵がかからんやんけ。というか鍵自体ついていない。全面的にここの女将さんと旦那さん、お客さんを信じ、襖一枚閉じて、外へ出る。
女将「いてらせい。」
石の人「はい、、。」
隣の駅まで電車で行き、少し歩き銭湯へ。地元のちいさな健康センターのような銭湯。まだ外は明るい。入ると、地元の家族連れや、じいちゃんがいっぱい。人気の銭湯だ。そんな中に一人の見知らぬ男が紛れ込む。
「よそ者じゃあ、、、。」
石の人とはバレてはならぬ。
1日の石修行のよごれをおとして、あーさっぱりさっぱり。さっぱりしたのでそろそろ夕飯を食べよう。民宿の夕飯はちょっとつまらないし、まだようやく日も落ちた頃、時間もたっぷりあるのでちいさな割烹へ入ることにした。
というかここくらいしか店がない。何もなさすぎてびびって、実は今日一つ目の海岸で石拾いしたあとに、予約をしておいた。この予約も大変で、なにしろまず電波0。そんでもってポケットwifiも沈黙。で、ネットも通話もできないまま、途方にくれていたら、ちょっとだけ民家の多そうな駅についたところで電波がつながり、すぐかけた。そこでようやく予約できた。ああ、よかったよかった。
女将に石を目撃され、電波が死んだままだったら、石を食って石の上で寝るところだった。
つきだしはいるかと尋ねられ、軽い気持ちではいと答えたら、なんか結構ボリューミーなやつがでてきた。そんで全部渋い食物だ。竹の子たらこ、わかめきゅうり酢の物、昆布のなんか太いやつ。味は全部甘からくて濃くて、美味しいのだけれどもうこれだけあれば十分、酒は飲めるという感じ。しかし私は腹が減っておる。これだけ歩き石を拾い風呂に入って気持ちよくこの店に来ているのだから他にも何か食べたい。おすすめを聞いてみたら、イカだとな。やはり。だって石拾いの道中イカが干してありましたから。
大将「はいよー。イカやでえ。」
おおお、多い。イカで終わる。でもうまい。
しばらく食べて飲んでいたら、やはり私が見ない顔なもんで、どっから来たんやとかいろいろ話していたら、せっかく来たのだからいろいろなイカを食べなさいということで、ホタルイカの佃煮をサービスしてくれた。これ佃煮だよね?またイカ。また甘からい。酒が無駄に進む。明日も石の修行なのだぞ。口が裂けても言わないが、大将そこんとこわかってくれや。
日本酒もどんどん出してくる。私がくる前に女性が来てこの酒を何本も飲んでベロベロになって帰っていったらしい。確かにうまい。
もうちょっと食べたくなって、天ぷら頼んだらまたボリューミーでやってきた。そんでクリスピー。どうしてこんなにクリスピー。まあおいしいのだけど。
大将「それにしてもお客さん、あんでこんなところに泊まりに来とるんや。」
どーーーーーーーーーーーーん。急に。急に聞かれてしまった。まあ、もうクリスピー天ぷら食べたら帰るし、最後に不可解な雰囲気にして帰ってもいいだろう、聞いたあなたが悪いんですよ。
石の人「ちょっと石を収集おりまして。日本中旅して石を採取しているわけです。」
堂々。酒の力をかりた。
大将「ほーう。それやったら石取れるところ知っとるで!」
まさーか!まさーかの展開やで。
石の人「えそれはいったいどういった石でありますでしょうか、、。」
さっきまでだらだらと飲んでいたのに急に前のめり食い気味で聞き始める私。
大将「まーんまるのきれいな石や。御影石や。」
石の人「まんまる、御影石。」
正直、御影石と聞いてもなんともない。なぜならぱっと見ふつーの石だからだ。が、まんまるという点は気になるし、記念に一個持って帰るにはいい。
記念。そう私はもちろん趣ある石を収集するために石の旅をしているのだが、そして今青森の石を越えるべく修行中だが、もう一つ日本の石を全て見ておきたい。石の地図を作りたいという野望すらある。(前回から急に言い始めた)なのでその土地の特徴的な石とは、必ず出逢っておきたいのだ。そしてその記念の石は、旅を思い出す装置と化す。よきかな。そういえば昔、旅先には必ずと言っていいほど記念メダル的なものが売っていた。名前も刻めることができた。あれってまだあるのだろうか。
大将に石の場所を教えてもらい、今いる最寄りの駅でレンタサイクルでいくといいと進められた。ほう、いい歳して一人でレンタサイクルを乗り回すのは少々恥ずかしいが、もうなんでもこい、石のためじゃい。
大将ありがとう。腹もいっぱい。石情報もごちそうさまです。また兵庫の石拾いに来る日まで、、。
店を出ると暗い。超田舎だから当たり前だ。もと来た電車で帰ってもよかったのだが、なんだか飲みすぎたしちょっと風にあたって酔いをさましながら宿へ帰ろうとひと駅ぶん歩くことに。大将の息子も、歩いて行けないこともないと言っていた。はい。全面的に信用します。だってあなた石を知る大将の息子だから。
うんでもやっぱ暗い。全然道がわからん。
これにて、本日の石拾いと石情報収集終了。
海で拾った石|兵庫県の海岸2
あらためて、拾った石はこんな感じ。写真が暗いが調整するのが面倒くさい。それにしても、あれ、家に帰って洗って乾かし並べてみると、なんだか普通。普通だ。
透明できらきらの粒々はあるが。
これもだが。
これも。なぜか海で見た時より、存在感が弱い。
これなんかつぶつぶすらない。あらー。
まさか、まさかこの私が、石の人である百戦錬磨のこの私が。濡れマジックにやられたとでもいうのか。いや、そんなことは断じてない。
おわり。
おわり。
次回、兵庫2日目の石拾い、次こそは青森を超える!こうご期待!多分無理。
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